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メンバーズファイル

投稿者:WDRAC 広報チーム

メンバーズファイルVol.2 経営者としての関わり方~藤森隆さんの場合

この連載はわれわれWDRAC(ワドラック)のメンバーがどんな人なのか、紹介するコーナーです。

その名も「メンバーズファイル」。

 

今回はメンバーの藤森隆(ふじもり たかし)さん。

株式会社フジモリの代表取締役を務める彼は、いち早く、経営者としてWDRACとのかかわりを始めました。

その取り組みとはいったいどういったことなのか、それを実現するに至った思いとは?

今回もメンバーズファイルで深堀りしていきます。

 

藤森隆さん

東京の三軒茶屋で1970年創業。オリジナルデザインのハンドメイドジュエリーの企画・製造・販売を手掛ける株式会社フジモリの代表取締役。自身もオーナーデザイナーとして、ジュエリーのデザインを担当。2013年にはシンガポールで海外展開をスタート。

●藤森さんの経営するジュエリー会社のHP 
https://www.fujimori.tokyo/

プライベートでは6歳の男の子と8歳の女の子の父。(2022年現在)

代表の長尾とは、2011年に東日本大震災の復興支援がきっかけで知り合い、その出会いがきっかけで長野に移住。現在は長野にも工房を持つ。

 

戦争の悲惨さは、音がしない

Q. WDRACに関わったきっかけは?


僕の祖父は南陽のボルネオ島で戦死していて。

研究者だったので全く勇ましくない人だったんですが、終戦の2か月前に自ら志願して戦地に行ったそうなんです。とはいえ僕と同じく喘息持ちで、そんなに体が強くなかった祖父は、おそらく戦闘もせずに、餓死というか、栄養失調で病気になって死んでしまったんだと思うんですよね。

その話が僕としては一つの戦争体験というか。

 

藤森さんのおじいさま

 

で、今回のウクライナのニュースを見て、戦争とは何かというのを考えたときに、戦争というと勇ましく戦って死んだりとか、すごくセンセーショナルな場面で命を落とすっていうイメージがあるんですが、ほとんどの場合はニュースで何度も繰り返し放映されるような衝撃的な爆撃や戦闘ではなく、大きな音のしない中で、普通の人が普通には死なない状態で死んでしまう、ということなんだなと強く思っていて。

WDRACで支援をしている人たちというのは、そういった困難に向かっている人たち、だというのがパチッとはまったというか。

普通の人たちに降りかかった「戦争」という悲惨さから、人々が抜け出すのを手助けすることを支援する、というのが、自分の個人的な戦争への思いと一致した、というのが大きかった気がします。

 

普段の仕事の中でできる支援を

Q. 経営されている会社で、ある取り組みを始めている、ということですが?


うちの会社は販売先もあったり、直接お客様と一緒にジュエリーを作るサービスだったり、色々と業務があるんですが、その全てにおいて
、ジュエリーを作ってお客様にお渡しする取引1件ごとに100円をWDRACに寄付する、というのを会社のみんなと考え、4月からプロジェクトとして行っています。

もともと、東日本大震災の復興支援きっかけに始めたワークショップが、今会社の中で大きな事業の柱になっていたり、当時出会た人と今もつながっていたりなど、その時の経験がなかったら、今うちの会社はないというくらい、「自ら支援に動くこと」がすごくいい影響として残っていたなという感じがあって。

今回も「何かしたいな」という思いが僕にもあったし、投げかけに対してメンバーも「そうだね」っていう。その初動は早かった感じがしますね。

 

被災地での活動のようす

 

イベントをやったり、チャリティーの商品を作ったりなど、社内でアイデアはたくさん出たんですが、そういうことだけにすると、会社に20人いるうちの4~5人だけがすごく関わって、残りの人たちはあまり関わらずに終わってしまうと思って。

そこで、今回は長く続けられて、みんなが関われて、無理をせず、普段の仕事の中で支援ができる方法はなにか、ということからアイデアを出して、全員一致で1件100円のプロジェクトをやろうという流れで決まりました。

Q. 実際始めて見て、スタッフの反応は?


最初からすごく前のめりな人と、結構静かな人と、という関心の温度差みたいなものはありました。ただ、それぞれ感じ方に差はありますが、1件1
件という件数でやっていることが、実感を伴っているなという感じはしていて。

毎月の全社ミーティングの中で、支援の集計として、どこの事業が何件というのを共有しているんですが、普段の仕事の成果がそのまま支援に結びつく、というのが受け入れられている、というか。そこに嫌な思いとか変な温度差というのは生まれず、よい経営指標になってきているな、という気がしています。金額ではなく件数だということが大切だな、と。

 

寄付をすることで、社内にもいい影響が

Q:これからやりたい、という人や企業に向けてのアドバイスは?


結構「寄付」という響きが「負担」というふうに置き換わってしまう人がいて。

普段どれだけ余裕がある中で「どれだけの負担ができるか」という風に考えてしまいがちで、でもそれが普通の感覚だと思うんですけど、それでいうとうちの会社は今全く余裕がなくて。本当に最初は、「寄付なんかしている場合か」と会社への想いで強く発言する人もいたのが実情だったんです。

じゃあ負担にならないものでどういうことが出来るんだろう、と考えたのが、寄付のために特別なことはしない、ということ。

普段の仕事の中で生まれる成果がそのまま寄付につながるので、寄付のためにやっている負担は自分が件数を数えて振り込みをするという5分〜10分くらい。あとは普段通りの仕事をしているだけなんですね。

 

株式会社 フジモリの工房

 

あと、業種によって違うとは思うんですが、ジュエリーって単価が高いので、1件100円というのは、売り上げとしては1%にも満たない金額。ビールに例えると1缶売ったら0.何円とか、Tシャツだと一枚売れたら2円とか3円とか、それくらいの感覚で。

今、大体月に300件程度の取引があって、3万円くらいの寄付が出来そうなので、20人のメンバーで分けるとひとりあたり、月に1500円ずつくらい寄付しているようなイメージです。

例えば毎月個人で3000円ずつ寄付して、といわれると「今のこの給料から3千円出せって言われても」…となるかもしれませんが、この方法だと個人でやるよりもずっと心理的な負担も少ないし、会社経営に与える金額の規模も少ないんですよね。また、寄付のための実務的・心理的な負担もないので、本当にみんな、全く無理なくやっています。

それと同時にいい影響もあって。

普段、「売り上げや利益を上げる」というのは金額に置き換えて考えてしまうので、これまで、今月の取引件数というのを、会社のメンバーはあまり意識したことがなかったんです。まだプロジェクトを始めて2か月ですが、月の取引件数が増えたことに対して、みんながおーっと驚いたり、やった、という感じがあったり。1件の単価はそれぞれ違いますが、純粋に件数でみんながその成果を喜び合える、というのがいい影響だなと思っています。

 

株式会社 フジモリ スタッフのみなさん

 

関心を継続するために

Q. 今後WDRACに期待することは?


こういう支援の一番の難しさって、時間がたっても関心を継続することだと思うんです。ウクライナの状況は何も改善していないけれど、世の中の関心はどんどん下がり続けていくし、それは仕方がないと思っていて。関心を持ち続けることが一つの支援の難しさでもあり面白さだなという風にも思っています。

そういうこともあって、会社のプロジェクトはずっと続けていきたいし、今後は子供たちにどう関心を持ってもらうか、ということをぜひ取り組んでもらいたいなと思っていて。

というのも、子供たちが今から戦争の悲惨さや、そこから生まれる困難を知って、その困難に対して自分たちがどういう風に携わっていけるのかと関心を持ち始めることが、10年後、20年後の戦争に対する関心の質につながっていくことなのかなと思っているんですよね。特に今、自分がリアルに子育て世代なので、それをどう子供たちに伝えていくのか、というのが難しそうだけど面白そうだなと。

それでいうとWDRACは、もちろん寄付をしてもらえるのはうれしいが、やっぱりどう関心を持ってもらうのか、ということがすごく大きなテーマ担っている支援プロジェクトだと思うので、そこに僕も子供たちとどう取り組めるかというのは、考えていきたいなと思っています。

 

藤森さんとご家族

 

藤森さんにはWDRACRadioにもご出演いただいています。

【WdracRadio】キープゴーイング!
#12ジュエリー会社を経営者藤森さんの始めた寄付活動とその結果がもたらす会社への影響